マンションのバリアフリー・段差解消リフォーム|管理規約と実際にできること

「和室の敷居につまずきそうになった」「お風呂の出入りで、またぐのがしんどくなってきた」——長く住んだマンションで、こうした小さな“ヒヤリ”が増えてきた、というご相談をいただくことがあります。
戸建てと違って、マンションは「自分の家なのに、自由に変えられない部分がある」のが悩ましいところです。窓を替えたい、玄関ドアを替えたい、と思っても、そこは自分の一存では手を入れられません。「うちのマンションでは、どこまでできるんだろう」——その線引きが分からないまま、相談をためらってしまう方は少なくないと思います。
結論からお伝えすると、マンションでも、バリアフリーのための工事はかなりの範囲で実現できます。段差をなくす、引き戸に替える、手すりを付ける、寒さをやわらげる。こうした「暮らしの安全に直結する部分」は、その多くが自分だけで使える範囲(専有部分)の中にあるからです。
この記事では、マンションのバリアフリー・段差解消リフォームについて、管理規約との付き合い方、実際にできる工事、費用の考え方、工事の段取りまでを整理しました。奈良・京都南部で700件以上のリフォーム・リノベーションを手がけてきた楓工務店の経験をもとに、判断の材料としてお使いください。
マンションのバリアフリーは「専有部分でできること」から考える
マンションのリフォームでは、まず次の線引きを押さえておくと、話がぐんと分かりやすくなります。
- 専有部分(せんゆうぶぶん・自分だけで自由に使える部分): 住戸の内側の空間。床・壁紙・室内の間仕切り壁・室内建具・キッチンやお風呂などの設備。ここは基本的に自由にリフォームできます
- 共用部分(きょうようぶぶん・マンション全体で共有している部分): 外壁・窓サッシ・玄関ドアの外側・バルコニー・配管の共用部分など。ここは自分の一存では変えられません
ここで大切なのは、バリアフリーで効果の大きい工事の多くは、専有部分の中で完結するということです。段差解消も、引き戸への変更も、手すりの取り付けも、浴室の入れ替えも、室内側の工事です。「マンションだから諦めるしかない」と思っていた方には、ここが一番の朗報だと思います。
管理規約は「最初に見る書類」
共用部分の使い方や、リフォームで守るべきルールを定めているのが管理規約です。工事の届け出方法、作業できる曜日や時間帯、床材の遮音(しゃおん・音を伝わりにくくすること)に関する決まりなどが、マンションごとに書かれています。
管理規約は物件ごとに内容が違うため、リフォームを検討する段階で必ず現物を確認します。管理規約はマンションの管理組合が保管しており、中古購入を検討中の場合は仲介の不動産会社を通じて確認できます。マンションリフォーム全般のできること・できないことは、リフォーム・リノベーションのご案内もあわせてご覧ください。
マンションの「段差」は、どこにできているか
「段差をなくしたい」とひとことで言っても、マンションで実際につまずきやすい場所は、だいたい決まっています。
1. 和室・洋室の境目(敷居・畳寄せ)
和室のある間取りでは、畳と廊下・洋室の境目に数センチの段差が生まれます。夜、暗い中でトイレに向かうときに足を取られやすいのが、この段差です。和室を洋室にする、あるいは床の高さをそろえる工事で解消できます。
2. 洗面脱衣室と浴室の出入口
古いユニットバスは、洗い場の床が一段高い(または低い)つくりになっていることが多く、またいで入る形になります。浴室の出入りは、家の中でもとくに事故が起きやすい場所です。ユニットバスを入れ替えるタイミングで、段差の小さいタイプと引き戸を選ぶと、出入りが一気にラクになります。
3. 玄関の上がり框(あがりかまち)
玄関の上がり框は、靴を脱ぎ履きする場所であり、体を持ち上げる動作が必要な場所です。段差そのものを完全になくすことは難しくても、手すりや、腰かけて靴を履けるベンチを設けることで、動作の負担は大きく変わります。
4. バルコニーへの出入口
掃き出し窓からバルコニーへ出る部分の段差は、共用部分に接するため、室内側だけでは解消しきれないことがあります。室内側に踏み台を設ける、動線を工夫するといった対応になる場合もあるため、ここは現地を見たうえでの判断になります(物件ごとに条件が異なります)。
段差解消・バリアフリーで実際にできる工事
マンションの室内でできる、代表的なバリアフリー工事をまとめます。
- 床のフラット化: 和室の敷居や畳寄せをなくし、住戸の中をひと続きの平らな床にします。床の下地から調整するため、部屋をまたいだ段差もそろえられます
- 引き戸への変更: 開き戸は「開けるために一歩下がる」動作が必要で、転倒のリスクがあります。そのまま横に引くだけで開く引き戸に替えると、動作が減って安全になります
- 出入口の拡張: 車椅子でも余裕をもって通れる幅(有効開口90cm)を確保する工事です。トイレの扉と空間を通常の約1.2倍に広げ、車椅子で向きを変えられる広さを確保した実例もあります
- 手すりの取り付け: 廊下・トイレ・浴室・玄関など、体重を預ける場所に設置します。下地の補強が必要な場合もあるため、壁の中の状態を確認したうえで施工します
- 浴室・トイレの入れ替え: 段差の小さいユニットバス、前かがみの動作を減らす自動開閉のフタ、足元が空いた壁付けの手洗いなど、動作をラクにする設備に替えられます
- 照明・スイッチの工夫: 足元を照らす明かり、押しやすい位置・大きさのスイッチにするだけでも、夜間の安全性が変わります
マンションで気をつけたいのは、床材の選び方です。多くのマンションで、下の階への音に配慮した床材の遮音性能に関する決まりがあります。基準の内容はマンションごとに異なるため、選べる床材は管理規約に沿って確認します。実際の仕上がりはリフォーム・リノベーションの施工事例でご覧いただけます。
「寒さ対策」こそ、見落とされがちなバリアフリー
手すりや段差と同じくらい大切なのが、家の中の温度差をなくすことです。暖かい部屋から寒い脱衣所・トイレへ移動したときに起きる血圧の急変(ヒートショック)は、冬場の家庭内事故の大きな原因のひとつだからです。
マンションでは窓サッシそのもの(共用部分)を交換することはできませんが、内窓(ないまど・既存の窓の内側にもう1枚の窓を足して、冬の寒さと外の音をやわらげる工夫。二重窓とも呼びます)なら、既存のサッシを傷つけずに室内側だけで設置できます。「窓辺のヒヤッとする冷たさが弱まる」「外の音が遠くなる」という体感の変化が出やすい工事です。
浴室も、壁・床・浴槽すべてに断熱がほどこされた「魔法瓶のような」ユニットバスにすれば、洗い場での寒さがやわらぎます。段差解消とあわせて計画すると、安全性がぐっと高まります。
断熱・窓のリフォームは、年度ごとの国の支援制度の対象になる場合があります。最新の内容は住宅省エネキャンペーンの公式サイトでご確認ください。
費用の目安と、使える制度
費用は工事の範囲で大きく変わります。手すり1本の取り付けのような部分工事から、住戸まるごとのリノベーションまで幅があるためです。
介護保険の「住宅改修」
要支援・要介護の認定を受けている方は、介護保険の「住宅改修費の支給」を利用できる場合があります。一般的には1人あたり生涯20万円までが上限で、そのうち所得に応じて1〜3割が自己負担です。手すりの取り付け、段差の解消、滑りにくい床材への変更、引き戸などへの扉の取り替え、洋式便器への取り替えなどが対象になります。
ただし、利用には工事前の申請と、ケアマネジャー(介護支援専門員)が作成する書類が必要です。工事を始めてからでは対象外になります。制度の詳しい条件・金額・申請の流れは年度や自治体で異なるため、お住まいの市町村の窓口や担当ケアマネジャーへのご確認が必須です。楓工務店でも、どの工事が対象になりそうかの整理からご相談いただけます。
住戸まるごと手を入れる場合
「どうせなら住まい全体を暮らしやすく」とお考えの場合は、マンションリノベーションという選択肢になります。楓工務店の施工実績では、500万円台のリノベーション(築25年マンション・和室を撤去してLDKを15.1畳に拡張)や、約1,250万円のこだわりリノベーション(奈良市O様邸・築28年・77.7㎡・工期約3カ月)といった例があります。いずれもバリアフリー特化の工事ではありませんが、住戸全体に手を入れる場合の規模感の参考になります。
マンションのバリアフリー工事に絞った費用実例は、公開できる形で整理したものが現時点でまとまっていないため、この記事では金額の記載を控えます。ご相談いただければ、お部屋の状態を見たうえで具体的な金額をお出しします。
工事の段取り|マンションならではの進め方
マンションのリフォームは、住戸の中だけで完結しません。工事の車両、資材の搬入、作業音は、どうしても他のお住まいに関わります。だからこそ、段取りが大切です。
- 困りごとと将来の希望を書き出す: 「今つらいこと」と「将来こうなったら困ること」を分けて整理します
- 管理規約を確認する: 工事の届け出方法、作業できる曜日・時間帯、床材の決まりなどを確認します
- 現地を見てもらい、プランと見積もりを取る: 段差の高さ、壁の下地、配管の位置などは、実際の部屋を見ないと判断できません
- 管理組合へ届け出る: 必要な書類や手続きはマンションごとに異なります。楓工務店でも、必要な書類の準備をお手伝いします
- 近隣へのごあいさつ・養生: 上下階・両隣へのごあいさつ、共用廊下やエレベーターの養生など、周囲への配慮を整えてから着工します
- 優先順位をつけて段階的に進める: 一度にすべてを行う必要はありません。危険度の高いところから順に進める方法もあります
なお、間取り変更をともなう工事について、楓工務店では、間取りを変更する際、木造のみ耐震診断を行っています。※混構造やRC造の建物の耐震診断は行っておりません。マンション(RC造)の場合は、建物の構造上どこまで手を入れられるかを、管理規約と現地の状況から確認して進めます。
物件購入前なら「リノベ営業同行内覧」で確認できる
「親のために、1階のマンションに住み替えようか」「これから中古を買ってバリアフリーにしたい」——そんな段階の方には、買う前の内覧に同行するサービスがあります。
楓工務店では、購入を検討している物件の内覧に、リノベ営業が同行する「リノベ営業同行内覧」を行っています。その場で「この部屋なら、どこまで段差をなくせそうか」「浴室の入れ替えはできそうか」といった見通しをお伝えできるため、物件を買うかどうかの判断材料になります。
逆に言えば、間取りや構造によっては、思っていたことができない物件もあるということです。買ってから気づくのではなく、買う前に確かめる。この順番が、マンションのバリアフリー化ではとくに大切です。
よくある質問(FAQ)
Q. マンションでも段差をなくすリフォームはできますか?
できます。和室の敷居・畳寄せの段差、洗面脱衣室と浴室の出入口の段差などは、室内側(専有部分)の工事で解消できるケースが多くあります。ただしバルコニーへの出入口など共用部分に接する部分は、条件によって対応が変わるため、現地を見たうえでご提案します。
Q. 手すりだけを付けてもらうこともできますか?
できます。廊下・トイレ・浴室・玄関など、必要な場所だけの取り付けもご相談いただけます。壁の中に下地がない場合は補強を行ってから設置します。
Q. 管理規約はどこで確認できますか?
マンションの管理組合が保管しています。中古購入を検討中の場合は、仲介の不動産会社を通じて確認できます。床材の遮音の決まりや工事のルールが物件ごとに定められているため、リフォーム前に必ず確認します。
Q. 床材は自由に選べますか?
多くのマンションで、下の階への音に配慮した床材の遮音性能に関する決まりがあります。基準の内容はマンションごとに異なるため、選べる床材は管理規約に沿って確認します。
Q. 窓の寒さが気になります。マンションでも断熱できますか?
できます。窓サッシそのもの(共用部分)の交換はできませんが、内窓(二重窓)を室内側に設置することで、冬の寒さと外の音をやわらげられます。マンションで広く採用されている方法です。
Q. 介護保険の住宅改修は、いくらまで使えますか?
一般的には1人あたり生涯20万円までが上限で、そのうち所得に応じて1〜3割が自己負担です。手すり設置・段差解消・扉の取り替えなどが対象になります。工事前の申請が必要で、条件は自治体・年度により異なるため、市町村窓口やケアマネジャーにご確認ください。
Q. 工事中は住み続けられますか?
工事の範囲によります。手すりの取り付けや部分的な工事なら住みながら進められることが多く、住戸全体のリノベーションでは仮住まいが必要になります。ご事情にあわせて、範囲と進め方をご相談ください。
Q. 車椅子でも使える住まいにできますか?
ご相談ください。車椅子でも余裕をもって通れる有効開口90cmの引き戸や、通常の約1.2倍に広げたトイレなど、車椅子を想定した設計の実例があります。マンションの場合は、住戸の広さと構造の条件によってできる範囲が変わるため、現地を見たうえでご提案します。
Q. 中古マンションを買ってからバリアフリーにしたいのですが、物件探しから相談できますか?
できます。楓工務店ではリノベ営業が物件の内覧に同行する「リノベ営業同行内覧」を行っており、購入前に「この部屋で何ができるか」をお伝えします。物件価格・購入の諸費用と、リフォーム・リノベーションの費用は分けて考えると、資金計画が立てやすくなります。
Q. プランや図面をつくってもらう場合、費用はかかりますか?
プラン・図面の作成に進む場合(プランナーがつく場合)は、設計申込(11万円)と現地解体調査(3万3千円)の合計14万3千円(税込)をお預かりします。工事請負契約後、工事費へ充当されます。
Q. まだ具体的に決まっていませんが、相談してもいいですか?
もちろんです。「最近つまずくことが増えた」「親が住むことになりそう」といった段階のご相談も歓迎しています。今の困りごとと、将来の見通しを一緒に整理するところから始めましょう。
まずは「困りごと」からご相談ください
楓工務店の街かどモデルハウスでは、段差のないフラットな床や引き戸、家の中の温度差が小さい住まいの心地よさを、実際に体感いただけます。図面や写真では分かりにくい「動きやすさ」を、ぜひその目で確かめてください。

奈良・京都南部でマンションのバリアフリー・段差解消のリフォーム・リノベーションをお考えの方へ。
楓工務店では、現地調査から管理規約の確認、介護保険・補助金の整理、設計・施工、アフターフォローまでサポートします。
